酸素と硫黄(16族元素)とその化合物h

【酸素と硫黄の単体】

酸素原子と硫黄原子はともに価電子(最外殻電子)が〔 6 〕個なので〔 2 〕価の陰イオンになりやすい。酸素の同素体には〔 酸素O2 〕と〔 オゾンO3 〕がある。オゾンは酸素よりも強い酸化作用を示し,ヨウ化カリウムデンプン紙を青変する@

酸素は,工業的には液体空気の分留,実験室的には〔 過酸化水素 〕や〔 塩素酸カリウム 〕の分解によって製造されるA。また,オゾンは酸素に〔 紫外線 〕を当てるか,〔 無声放電 〕を行うと生成する。

黄の同素体Bには〔 単斜硫黄 〕,〔 斜方硫黄 〕,〔 ゴム状硫黄 〕などが存在する。いずれも水に不溶で,斜方硫黄は黄色で,常温で安定な塊状の結晶である。単斜硫黄は淡黄色の針状の結晶で,95.3℃以上で安定な結晶であ

 る。斜方硫黄と単斜硫黄はともに,S8の〔  〕分子で(図a),〔 二硫化炭素CS2 〕に溶解する。ゴム状硫黄は暗褐色の鎖状のゴム状分子Sx(図b)で弾力性があり,二硫化炭素に溶解しない。硫黄は空気中で点火すると青白い炎をだして燃え,二酸化硫黄SO2となる。  
 

@ ヨウ化カリウムデンプン紙は,ろ紙にヨウ化カリウムKIとデンプンの水溶液をしみこませたもので,酸化剤に触れるとヨウ化カリウムのIが酸化されI2が生成する。生成したI2はデンプンとヨウ素デンプン反応によって青変する。ヨウ化カリウムデンプン紙は酸化剤の検出に用いられる。

A 〔 2H2O2  2H2O + O2 〕〔 2KClO3  2KCl + 3O2 〕 どちらも,酸化マンガン(W)MnO2を触媒に用いる

B


 

【硫化水素と二酸化硫黄】

H2Sは実験室的には硫化鉄(U)に希塩酸または希硫酸を加える@。〔  〕色,    〔 腐卵 〕臭の有毒気体で,水に溶けて弱酸性を示す(一部がHS2に電離する)。また〔 還元 〕剤として用いられるA硫化水素を金属イオンを含む水溶液に通じると,水溶液中で生じた硫化物イオンS2が金属イオンと反応して沈殿を生じるB

  SO2は工業的に黄鉄鉱FeS2の燃焼によって,実験室では銅や銀に熱濃硫酸C亜硫酸塩や亜硫酸水素塩(金属イオンと亜硫酸イオンSO32亜硫酸水素HSO3からなる物質)に希硫酸Dによって発生する。〔  〕色,〔 刺激 〕臭の気体で水に溶けて弱酸性を示すE〔 還元 〕剤としてはたらく(強い還元剤との反応では酸化剤としてはたらく)F 

 

@ 〔 FeS + H2SO4 → FeSO4 + H2S 〕(無機化学の反応式 パターン9 弱酸の塩と強酸 ⇒ 弱酸と強酸の塩)

A 〔 H2S → S + 2H + 2e 〕(還元剤の半反応式)

B イオン化列でまとめるとよい。

 

C 〔 Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + SO2 + H2O 〕 

 〔 2Ag + 2H2SO4 → Ag2SO4 + SO2 + 2H2O 〕 

(無機化学の反応式 パターン5 CuAgと熱濃硫酸 ⇒ その金属の硫酸塩+SO2+α)

D   〔 Na2SO3 + H2SO4 → Na2SO4 + SO2 + H2O  

 〔 2NaHSO3 + H2SO4 → Na2SO4 + 2SO2 + 2H2O 

  (無機化学の反応式 パターン9 弱酸の塩と強酸 ⇒ 弱酸と強酸の塩)

E  SO2NO2CO2などの非金属の酸化物は,水に溶けて酸となるので酸性酸化物である(金属の酸化物は塩基酸化物)。 

F  〔 SO2 + 2H2O → SO42 + 4H + 2e 〕 還元剤の半反応式

  〔 SO2 + 4H + 4e → S + 2H2O   〕  酸化剤の半反応式

【硫酸】 

 

硫酸H2SO4は工業的に〔 接触法 〕で製造する@。濃硫酸,熱濃硫酸,希硫酸の場合でそれぞれ次のような性質を示す。

濃硫酸は〔 不揮発 〕性の液体(沸点が高く気体になりにくい)で,揮発性の酸(HClHNO3)の塩に不揮発性の濃硫酸を作用させると,揮発性の酸が発生するA。水と激しく反応して多量の熱を発生し,〔 脱水 〕作用を示す。例えば,ブドウ糖C6H12O6のような化合物に濃硫酸を作用させると,HOH2Oとして取られてしまうので炭化(Cだけが残る)するB。その他,エタノールC2H5OHに濃硫酸を加えて加熱するとやはり水分子が取れてエチレンC2H4やジエチルエーテルC2H5OC2H5を生成するC。また水で濃硫酸を希釈するときは,〔  〕に〔 濃硫酸 〕をゆっくり加えるD熱濃硫酸には〔 酸化 〕作用があり,イオン化傾向が小さいCuAgも溶かすE。また,希硫酸は〔 強酸 〕としてはたらく。

@接触式硫酸製造法(接触法)

過程1: 二酸化硫黄SO2を〔 酸化バナジウム(X)V2O5 〕を触媒とし空気中の酸素と反応させ〔 三酸化硫黄SO3 〕を
    つくる。

    〔 2SO2 + O2 → 2SO3 〕

過程2: 三酸化硫黄を9899%の濃硫酸に吸収させる。この硫酸を〔 発煙硫酸 〕という。これに希硫酸を加えると,希硫酸中の水とSO3が反応し,H2SO4ができ,濃硫酸となる。SO3を直接水に吸収させると,多量の発熱のため水が蒸発し,SO3が溶け込みにくくなる。そこで,濃硫酸に吸収させ(この方が発熱量が少ない),発煙硫酸とした後,希硫酸で薄めて濃硫酸にする。

    〔 SO3 + H2O → H2SO4 〕

A 塩酸HClや硝酸HNO3は揮発性がある酸で,その塩NaClNaNO3に不揮発性の濃硫酸を作用させると,硫酸のHClNO3が結合し,HClHNO3となって揮発して遊離する。

〔 NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl   〕

〔 NaNO3 + H2SO4 → NaHSO4 + HNO3 〕
高温だとNa2SO4になる。

B ブドウ糖C6H12O6分子内からH2OがとれてCだけが残る。

〔 C6H12O6 → 6C + 6H2O 〕

  130140℃で行うと2分子のエタノールC2H5OH間で水がとれる。

   〔 2C2H5OH → C2H5OC2H5 + H2O 〕

D 濃硫酸と水は接触面で激しく反応し発熱するので,多量の水に濃硫酸を加える。

E〔 Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + SO2 + 2H2O  〕

   (無機化学の反応式 パターン5 CuAgと熱濃硫酸 ⇒ その金属の硫酸塩+SO2+α)

【酸素の化合物(オキソ酸と酸化物)】 

硫酸H2SO4のように分子中に酸素原子を含む酸を〔 オキソ酸 〕という。オキソ酸の中では,酸素以外で陰性の強い元素(電子を受け取って陰イオンになりやすく,周期表では貴ガスをのぞいて右上にある元素)を含んでいるものほど酸性が強くなる@。また,分子中の酸素原子の数が多いほど酸性は強くなるA

金属元素の酸化物は酸と直接反応したり,水と反応して塩基になったりするので 〔 塩基 〕性酸化物という(AlZnSnPbの酸化物は両性酸化物)。また非金属元素の酸化物は直接塩基と反応したり,水と反応して酸になったりするので〔  〕性酸化物という。

 

@ 例)リン酸H3PO4と硫酸H2SO4

    PよりもSの方が陰性が強いのでHが外れやすいので,硫酸の方が酸性が強い。

A 例)塩素のオキソ酸と酸性の強さ。

   次亜塩素酸HClO < 亜塩素酸HClO2 < 塩素酸HClO3 < 過塩素酸HClO4